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第74話 本当にお前がゾルダなのか~? ~ジェナサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-05-23 21:41:19

「あたいがこの街の、商業ギルドのギルド長、ジェナだ!」

ギルドの応接室に行くなり、大きな声で名乗った。

挨拶は基本だからな。

応接室に行くと2人の女と1人の男がいた。

---- そこから少し前に遡る ----

あたいは本を読みながらのんびりと寛いでいた。

すると、ノックの音がした。

「いいぞ、入って」

ドアを開けて部屋に入ってきたのは、訝しそうな顔をした受付の嬢ちゃんだった。

「あの……ギルド長、今お話よろしいでしょうか?」

「おぅ、なんだ。

 受付は笑顔が大事だって言うのにそんな顔して」

「ギルドの受付にギルド長に会いたいと言う人が来ておりまして……

 伺ったところ、事前にお約束をしていないとことでしたが、いかがいたしましょうか」

約束もなしに突然の面会希望か。

だいたいそういう輩は礼儀も何もあったもんじゃない。

「どうせ面倒な奴らだろ。

 そうだな……

 7日後なら空いていると言って、それでも直ぐ会わせろって言うなら追い返してくれ」

「承知しました」

そう言うと受付の嬢ちゃんは再び受付へ戻っていった。

しかし事前に話を通していないし、商いの基本もわかってないやつらだな。

そういうのと関わるとロクなことがないしな。

7日も先で会うと言って、それでも会うというなら会ってやらなくもないがな。

コップに無くなった茶を注ぎ、ふたたび本を読み始めた。

数ページ読み進んだところで、ふたたびノックの音がした。

「今度はなんだ。

 今日はゆっくりしたい日なのに」

先ほどの受付の嬢ちゃんが、今度は慌てて入ってきた。

「ギルド長、先ほどの方たちですが……

 『ゾルダ』の使いと仰っていて、すぐに会いたいとのことです」

「何?」

『ゾルダ』と言えば……

確かひいひいばあちゃんが残した遺言の中にあったけ。

『ゾルダ様にはメルナール一族の礎を築かせてもらった。

 そのゾルダ様から話があった場合は、家訓の是々非々の判断を抜きにして取り組め』

だったかな。

でも本当にそいつらはゾルダの使いなのか……

ゾルダの容姿がわかっている訳ではないし、本当にそいつの使いかはわからんだろう。

ひいひいばあちゃんの遺言は守りたいが……

しばらく考え込むが、これと言ったいい手が浮かばない。

あれこれ悩んでいてもしかたないし……

「わかった。

 あたいが今から会う。

 会って、本当にそいつらが『ゾルダ』に関係して
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  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第68話 勇者たちの怨念 ~ソフィアサイド~

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